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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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康本 征史「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営

FEEDNOTE No.38 掲載記事

非常事態宣言が出るごとに、日本(世界もですが)が疲弊していくのが体感できます。ワクチン接種が救世主となるかが国の行く末を決めることになりそうです。

さて、昨年4月の保険改定からすでに1年が過ぎようとしているにも関わらず、P重防等に関する質問をよく受けます。若い先生にとっては、過去の保険改正の経緯がわからないことから、余計に混乱しているように見えます。そこで、あくまで私個人の意見ではありますが、保険改定の流れ(国の意図)を踏まえて解説を試みたいと思います。

以前の保険制度における歯周病の診断は、G(歯肉炎)、P1(軽度歯周炎)、P2(中等度歯周炎)、P3(重度歯周炎)となっていました。(図1)

図1

あたかもGとPが別病名のようになっていますし、日頃、分けて使っている先生がほとんどだと思います。

しかし、日本歯周病学会が編纂したガイドライン『歯周治療の指針2015』にあるように、「歯周病は歯肉病変と歯周炎に大別される(P9)」つまりGはPに含まれるわけです。診療報酬明細書に認められている単G(単純性歯肉炎)は、病名としてはP(歯周病)でも良いことになります。歴史的に言えば、Gはレセプト請求用の病名なのです。(図2)

図2

昨年の4月に導入されたP重防(歯周病重症化予防治療)によって、この「ズレ」が表面化し、さらに長期管理が前提となったことで、ますます現場に混乱を生じさせています。というのも、アタッチメントロスのない乳歯列や混合歯列にP病名をつけることは現場としては抵抗感があり、かといって長期管理を続けていけば、必ず乳歯列は混合歯列を経て永久歯列に変わっていくので、どこでP病名に変えるのか、判断しづらいのです。(再初診がないので)

さらに、これまでの算定ルールに『乳歯があれば、P混検で算定する』、『混合歯列期において歯周基本検査で算定した場合には、乳歯も含めて1口腔単位で歯周基本検査を行うことが必要である(平成28年疑義解釈)』などがある一方、P重防の算定においては、歯周基本検査に乳歯は含まず永久歯の歯数で算定すること(令和2年疑義解釈)とされています。矛盾していると言えますが、これも保険制度が改定を繰り返してきた結果と捉えてください。

2年に一度、時代に合わせて改定を行うことで算定ルールが出来上がっています。新しい考え方を導入した際には、これまでと矛盾するような部分も出てきますが、国の方向性をきちんと捉え、柔軟に対応をしていくことが求められています。個人的には、混合歯列期におけるP重防の算定は、口腔内の半分以上が永久歯になってからと考えております。つまり混合歯列前期はC管理が中心、後期は、C管理に加えてP(G)管理が加わるという捉え方をしています。

康本 征史
康本 征史 profile 日本歯科イノベーション協会(JDI) 会長
柏の葉総合歯科・小児歯科 院長

1994年康本歯科クリニック開業。
2000年予防歯科センターを増設し、定期管理型歯科医院として業績を伸ばす。
各地域での講演会だけでなく、21世紀の歯科医院経営の追求を目的とした「康本塾」「次代塾」を主宰する等、精力的に活動中。