FEEDNOTE No.35 掲載記事
新型コロナウィルス感染症が収まる気配がありません。確固たる治療法がないため、効果的な対策が見つかっていないので仕方がないようです。Withコロナの状態が今後半年、1年と続くことを想像していかなければならない状況と言えます。
先日、(公)日本歯科衛生士会から「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」がHPで公開されました。この調査は5年ごとに行われており、歯科衛生士を取り巻く職環境について詳細なデータが掲載されています。そこにも書かれておりますが、アンケート参加者に少し偏りがある分を差し引きしてみる必要があるものの、今の歯科衛生士が置かれている状況が理解できます。
その中で「歯科衛生士としてのすべての年収(税込)」を取り上げてみたいと思います(●図1)。まず、歯科衛生士の職場が、診療所、病院・大学病院勤務といった臨床系の他、行政、教育養成機関、企業などの非臨床系といろんな勤務先があることがわかります。自身が歯科医師として単純に臨床現場を選択したこともあり、その他の分野がこれほどたくさんあるとは考えていませんでした。

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そして、問題はその報酬に大きな差が見られることです。臨床系である我々歯科診療所は年収400万円未満が80%近くになっており(図中赤ライン)、他業種と比べても非常にその割合が高い。コロナ感染症などの環境下にも関わらず臨床の最前線で頑張っている従業員の給与水準が低いままだと、仮に歯科衛生士が今後増えたとしても、非臨床系へ就職をしてしまう要因になると考えます。
年収400万円あれば、住む場所によっても異なりますが、一人暮らしが可能となり、500万円なら家庭が持てると言われています。つまり、経済的にも自立できるわけです。歯科衛生士が補助的な位置から業務上も欠かせないものとなっている現在では、その報酬も高くなるべきだと考えます。もちろん、報酬は技術を含めた業務水準を保ってのことであり、「DHが集まらない→給与を上げて募集」となっては元も子もありません。
では、年収400万円を報酬として支払うために、どのくらいの医業収入が必要なのでしょうか。顧問の税理士の協力を得て、決算書から労働分配率、粗利率を出してください。「年収(報酬)÷労働分配率÷粗利率」(●図2)で年間の必要売上が計算できます。それを元に、医院の年間診療日数で割り、1回診療単価(平均だと1時間9千円程度)で割ると、1日あたりの人数が計算されます。

個人事業と医療法人では経費率が変わりますので、その点は税理士の助言を受けて修正してください。このように、あくまで目安ではあっても、スタッフと目標を定めることが可能となります。
一つだけ注意事項があります。医療者であるスタッフと話す場合、売上という金額ではなく、(治療する・メンテナンスする)人数を目標にしなければなりません。モチベーションが下がりますから。
※株式会社ディーアソシエイツ HPから自動計算用のエクセルシートがダウンロードできます。