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歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます 本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、 多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。
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私は歯科衛生士歴11年目、iDHA国際歯科衛生士インストラクターの柗本詩織と申します。私が歯科衛生士を続ける原動力のひとつは、前回も紹介させていただいた「歯科衛生士さんは、人を笑顔にできる仕事であり、人の役に立てる仕事」です。その素直な言葉に触れた瞬間、“痛い”や“こわい”の先にある笑顔や安心を届けたい――そう強く感じました。この気持ちは今も私の心の軸であり、現場に立つたびに患者さんの変化や成長を間近で感じられることが、歯科衛生士としての誇りになっています。
日本では、「痛くなったら歯医者へ行く」という考え方がいまだ根強く、定期検診の習慣が十分に浸透していません。スウェーデンでは90%以上、アメリカやイギリスでも70%以上の人が定期的に歯科健診を受けているのに対し、日本の成人の受診率は30%前後にとどまっています。この差は制度や教育だけでなく、子ども時代からの予防意識や文化の違いにも起因していると感じます。だからこそ、私たち歯科衛生士が担う「予防の現場」の意味は、単に虫歯や歯周病を防ぐことにとどまりません。それは、患者さんの健康を支えるだけでなく、医院全体の信頼やチームの成長にもつながる重要な役割を持っているのです。
私が担当している患者さんは、長年「痛くなったら行く」タイプの方でした。初めて来院されたときはむし歯や歯周病がかなり進行しており、口腔内の状態も芳しくありませんでした。人見知りだったこともあり、最初はなかなかお話もしてくれませんでしたが、来院のたびに予防の大切さを伝え続けるうちに、少しずつ意識が変化していきました。生活習慣を見直し、禁煙にも成功され、今では3か月に1回、定期検診で毎回私を指名して通ってくださいます。ある日、ご本人が「こんなに変わるなんて思わなかった。もっと早く来ればよかった」。その言葉を聞いたとき、私は改めて感じました――予防は“治療の先”ではなく、“人生の中”にあるのだと。
こうした一人ひとりの変化は、患者さん自身の健康改善だけでなく、医院の信頼やリピート率の向上にもつながります。さらに、後輩への指導を通して、チーム全体のスキルアップや連携力を高めることができます。つまり、歯科衛生士が一人ひとり丁寧に予防に取り組むことこそが、組織を支える基盤になるのです。
私が現場に立ち続ける理由は、患者さんの笑顔を見る喜びだけではありません。患者さんの健康を守ると同時に、医院の成長やチームの力を支えることができる。日々の小さな積み重ねが、予防歯科の価値を広げ、組織全体の力になる――。その実感こそ、私がこの仕事に誇りを持つ理由であり、“予防”を支える現場に立ち続ける意味なのです。