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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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ストック型予防医療の理論と実践

FEEDNOTE No.48 掲載記事

プロフィラキシス(予防)を成功に導くためには

問診では無く医療面接からスタート

Ⅰ 疾病情報を収集する
Ⅱ 「医療者」「患者」の関係を確立する
Ⅲ 患者教育と動機付けを行う

当院において医療面接時に記録する初診カウンセリングメモとなりますが、通常行われている問診であれば、〇〇が痛いので治してほしい、〇〇の銀歯が取れたので再装着してほしいです。でクライエントの訴えは終了し、その主訴に対して診察が進んでまいります。しかしここまで解説させていただいた医療面接をベースにカウンセリングを行っていくと、主人公となるクライエントが自身の人生を構築していく上で、歯科医院に本来何を求めているのか、ということに気づき自ら行動を起こすようになるのです。『その場限りの治療ではなく、ちゃんと治してほしい』私の健康を守り続けるためにサポートしてほしい、そのために私は何を行って行ったら良いのですか?とクライエント自らが着実なステップを踏みながら今までとは全く異なる歩みを進めてくれるのです。

初診カウンセリングメモ写真

あらためて主役は誰か???

情報収集することに焦点を絞れば、専門家としての「医療者」が主人公となりますが、「医療者と患者」共にいるからこそ、感情が動く、だから二人ともが主人公であると言えます。二人が共に人間関係を築くからこそ、お互いにそれぞれの感情が心に湧いては消え、消えてはまた新しい感情が起こって、その過程、結果、延長線上で二人の間で信頼関係が生まれます。
診療所を離れ、帰宅した患者に医療者は同伴できません。だからこそ、患者は一人でも主人公として生きていかなければならないのです。まさしく、Self Medication:セルフメディケーション=自分の健康を「患者が主人公」として創り上げていくことが非常に重要となります。

医療面接実施時に、医療者(歯科医師・カウンセラー・コーディネーター)の目の前に座って変化し続ける患者の中に起こってくる「感情」に十分に配慮し、理解しながら、話してくれる情報の確かさを高めるように努力する必要があります。それと同時に患者の心に流れる感情は、医療者の関わり方、話し方、視線の取り方などによって変化するのです。
そこで医療者のやっていること(次にお話しするポーターの5つの態度分析を参考)への患者からの評価が、患者の感情という形でリアルタイムに伝えられ、知ることができる、というメリットが生まれます。これらは全て2人の信頼関係を生むための配慮となります。

まとめ

問診ではコンプライアンスがキーワードだったが、メディカルインタビューではクライエントのやる気「アドヒアランス=自分から治療過程に積極的に参加して選択した治療法に、こだわってやり遂げようとする姿勢」が鍵になります。
今までの問診における医療者-患者関係と、メディカルインタビューの人間関係の大きな違いは、人間観、病気観、そして健康観となります。人間の身体だけで捉えようとするのではなく、患者も専門家として大切な医療者も、身体・心理・社会、そしてスピリチュアル(信念・心情・価値観)な側面も含む「人格」をもつ存在であるという基本がコンセプトになっていることとなります。
セルフメディケーション(健康に対する自己理解と意識)が確立し、主体性・自主性が育成され、主人公として歯科医療に対し真剣に取り組んでくれるようになるのです。
ぜひ全国の歯科医院さんで実践されることを期待しております。歯科医療の価値を大きく高めることができるそれが問診では得られない「Medical Interview 医療面接」の実態なのです。

辻村 傑
辻村 傑 profile つじむら歯科医院グループ 総院長
1993 神奈川歯科大学 卒業
1995 つじむら歯科医院 開業
1997 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010 南カリフォルニア大学客員研究員、アンバサダー(任命大使)
2013 インディアナ大学歯周病学客員講師
2014 神奈川歯科大学 顎咬合機能回復補綴医学講座 講師
2017 IDHA: 国際歯科衛生士学会 会長就任