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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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ストック型予防医療の理論と実践

FEEDNOTE No.32 掲載記事

抗酸化物質(アスコルビン酸)によるイリゲーション・抗酸化サプリメントの応用について

歯科の臨床現場において抗酸化対策として最も導入しやすい抗酸化物質は水溶性のビタミンC(以下、VC)となるが、酸性度が強いため、活性酸素の抗酸化(消去能)と濃度について、電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance; ESR)を用いて、臨床応用に適したVC濃度を調べた(図1)。

図1

DW蒸留水にVC(アスコルビン酸)を混ぜて行った結果から、VC500、 VC1000で明確な活性酸素消去能を確認した。このことから当院ではDW1000mlに対し1gのVCを溶かし使用している。VCを摂取することで口腔内を正常な状態に戻すことが考えられる。

次にT-method Instituteでは、カリエスのトータルリスクが8を下回ったクライアント(カリエスリスクの低減を実現した患者)に対し、フッ素塗布を行わずに、メンテナンスで傷ついた粘膜や、創傷治癒促進のためにチュアブルタイプのVCサプリメントを活用している(図2)。

図2

チュアブルVCの内容

本商品は、VCを1粒あたり200mgになるように設計されており、1日5粒1,000mg摂取を目安量に1袋150粒入り(約1カ月分)となっている。VCを1粒200mgそのまま摂取すると非常に酸味が強く食べにくいが、キシリトールを配合されていることにより使用感も良好である。キシリトールは既に知られているように、虫歯菌の餌にならない甘味料であり、風味も後味がすっきりしているのでVCとの相性がよく、配合量は味の面を重視し1粒320mg、5粒で1,600mgとなる。

これだけでもまだまだ食べにくいので、なんらかの風味をつけるように試作を繰り返した結果、2020年2月には医薬品との相互作用のリスクを抑えるためにグレープフルーツ果汁からオレンジ風味へとリニューアル。より使用しやすいチュアブルVCに。

チュアブルVCの使用により口腔内のpHが下がりすぎることはないか

このチュアブルVCは、次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用したあと、口腔内で溶かしながら摂取していただくことを目的としている。一方で気になることは、このチュアブルVC単独で摂取した際に口腔内が過度に酸性になってかえって問題が起こらないかということである。つまり口腔内のpHが5.5以下になると脱灰現象が起きるからである。

そこで実際にチュアブルVCを一度に2粒摂取した際の唾液のpHを測定する実験を実施した。ボランティア3名に対して摂取前、摂取直後、食べ終わってから30分後の唾液pHについて調査を行った。

その結果、摂取直後はややアルカリ性(pH8程度)に寄ったあと、摂取30分後にはやや酸性(pH6程度)になることが分かった。今回の結果からは、口腔内の唾液のpHは5.5を下回ることはなかった。

これは、唾液に緩衝能があること、チュアブルVCにはキシリトールを配合していることから過度にpHが下がることがなかったものと思われる。

ちなみにチュアブルVCを水に溶かしたときの水溶液のpHはほぼ3であった。以上のことから、次亜塩素酸ナトリウム溶液で処置を行わず、チュアブルVCを単独で摂取した場合でも口腔内の唾液pHが過度に下がることはないことが分かった。

次回は、チュアブルVCの使用による糖分摂取調査をお伝えいたします。

辻村 傑
辻村 傑 profile つじむら歯科医院グループ 総院長
1993 神奈川歯科大学 卒業
1995 つじむら歯科医院 開業
1997 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010 南カリフォルニア大学客員研究員、アンバサダー(任命大使)
2013 インディアナ大学歯周病学客員講師
2014 神奈川歯科大学 顎咬合機能回復補綴医学講座 講師
2017 IDHA: 国際歯科衛生士学会 会長就任