【FEEDデンタル】

カテゴリーから探す

臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
  • blank
掲載記事を選択する

titleimg_terauchi

FEEDNOTE No.63 掲載記事

突然ですが、皆様はサウジアラビアについてどのようなイメージをお持ちですか?私の印象は、『石油でお金持ちだけれど、イスラム教を重視するがあまりに特に女性が暮らしづらく、少し勿体無い国』というものでした。しかし、4月末からサウジアラビアエンド学会で講演、キングサウド大学でハンズオンコースをやらせていただき、現地の方と情報交換する中で5年以上前からサウジの変革が始まっていること、上記の印象はすでに過去のものであることを気付かされました。

高齢になった現サルマーン国王に代わりに権力を持っているのは次期国王のムハンマド皇太子です。彼は、「サウジVISION2030」を打ち出し、2030年EXPO・2034年ワールドカップの誘致に成功するとともに、教育・インフラの整備・国内産業の育成に力を注いでいます。首都のリヤドは建設ラッシュ真っ只中です。完成時には400M×400M×400Mになる『The Cube』という物件の建設現場では、その規模感に圧倒されてしまいました。イスラム国家の盟主・サウジアラビアの「本気」がビシビシと伝わってきました。

一方、教育面では医療をはじめとした科学技術のレベルを上げる取り組みが幅広く実施されています。サウジアラビアの診療体制は国立の病院と私立(=民間)のクリニックの二本立てですが、高度な先端医療は民間のクリニックでないと受けられません。歯科に関しては、歯学部の増設により歯科医師同士の競争が激しくなっており、皆が差別化のできる民間クリニックへの就職を志向しているそうです。差別化の内容として「技術の習得と勉強。特に自分の歯を残すための根管治療を充実させたい」と考えている方々が多く、今回のサウジアラビアエンド学会は、500人超(サウジ全土の歯科医師数は約1万人)もの参加者を集めたそうです。実際、受講生の皆さまも本当に熱心で、わたしの講演に多方面からの質問をしてくださいました。さらに、ジェッタ(紅海沿岸の都市)の大学から『同大学の継続的学習プログラムでデンタルアーツアカデミーとコラボできないか』というありがたいお申し出をいただきました。どのような形の協業になるか、とても楽しみなところです。

全行程にアテンドしてくださったZaher先生が「リヤドは眠らない街になっているんだ」とおっしゃっていました。やっと訪れた改革のチャンスに皆が寸暇を惜しんで自分の仕事に取り組んでいるからだそうです。わたしは、無暗な長時間労働は全く良いとは思いませんが、時間を忘れて仕事に取り組める「純粋な姿勢」や「やり遂げるための貪欲さ」は絶対に忘れてはならないなあと思いました。色々な国々を見てきて実感した、「発展のために絶対不可欠なキー」だと思われるからです。

遠いイスラムの地で、「一番の差別化は自分の歯を残す知識・技術を学ぶこと」と根管治療を熱心に学んでくださる方々に巡り会うことが出来、大変に有意義なゴールデンウィークとなりました。

profileimg_terauchi
寺内 吉継 profile 東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師

神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。