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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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FEEDNOTE No.61 掲載記事

早いものでわたしも気づけば50代後半になり、周囲をみまわすと、後輩の先生ばかりが目に留まるようになってきてしまいました。いつまでも『駆け出し』気分でバリバリ頑張ってまいりましたが、時計の針はわたしを着々と『若手』から『ベテラン』に変えてしまったようです。そんな私のところに最近よく連絡をくださるのが、ヘッドハンターの皆さまです。主にアメリカの大学のフルタイムのポジションをオファーしてくださるのですが、『国内の診療もあるし、現在抱えているパートタイムの仕事もあるし』で基本的にはすべてお断りさせていただいています。海外の大学に留学もしていない自分を候補者リストに入れてくださるのはとても有難いことといつも本当に感謝をしているのですが、ここでいつも考えるのが、『なぜ自分が?』という点です。同じように、AAEやIFEAなどでここ数年ずっと基調講演を務めさせていただいているのですが、『なにが受けているのかな?』というのが消えない疑問でした。各学会の執行委員や参加者の先生方にそれとなく聞いてみたところ、①学問的なエビデンスと臨床を融合させている点、②症例や考え方が斬新な点、といった回答が得られました。①に関しては、『再現性のある治療をしよう、そのためには論文でエビデンス化している、成功率の高い方法を選択しよう』と常に気を付けているポイントですからとても心当たりがあります。②については、『自分がいつも普通にやっていること』なのですが、無理矢理少し掘り下げてみると、どうやらわたしの『結局のところ…』という考え方や『三次元的なものの捉え方』に起因するようです。わたしが専門とする根管治療は、結局のところ根管内の感染を除去しさえすればよいわけなので、『○△先生のやり方』などではなく、『感染源をいかに効率的に根絶するか』のみを考えています。効率的に考えるためには物事の一面だけではなく、多面的に(見えない部分も含めて)ものごとを考慮する必要があります。もともと、『向こう側はどうなっているのかな?』とか『見えないところではなにがおこっているのだろう?』を既に分かっている事実を利用しながら立体的に推理・想像するのが得意なほうでした。破折器具除去に取り組もうと考えたのも『破折した器具は歯の中でどうなっているのだろう?どうすれば出てくるのかな?』と単純に不思議に思ったためでした。しかし、この捉え方に磨きがかかったのは2012年にデンタルアーツアカデミーという実習中心のTeaching Facilityを立ち上げてからです。こちらでは一年に何人も『わたしが聞きたいと思う世界のKOL』を招待してハンズオンコースを開催していますが、彼らと情報交換する中で『まだ研究途上の様々な根管治療の課題についての想像・推理』が研ぎ澄まされてまいりました。どうやら自分の従来の興味を世界のKOLと化学反応させることができたようです。

ところで、面白いことに、デンタルアーツに来てくださる意識の高い受講生の先生方も外国人の講師をうまく利用される人が多いのです。ある先生は、講師に論文の査読を頼み、立派に外国の雑誌に論文を掲載されていました。また他の先生がご自分の症例を講師にお見せしたところ講師の先生は大変に感銘を受け、その症例を利用した論文を執筆になりました。当然症例元の先生のお名前も論文に掲載されます。

2025年も私はまだまだ気分だけは『若手』のつもりで様々な活動をしていくつもりです。是非、皆様もデンタルアーツのイベントに来て、世界のKOLをご自身の研究活動に役立ててみてはいかがでしょうか?

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寺内 吉継 profile 東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師

神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。