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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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FEEDNOTE No.59 掲載記事

8月末の一週間、ウェストバージニア大学の大学院とミシガン州のラルフ・アール・ソマーエンドシンポジウムで講演とハンズオンを行ってまいりました。忙しい学会とは違った時間の過ごし方を現地の方々とする中で、色々と情報交換する機会に恵まれました。

いつもながらですが、最も驚いたのは、アメリカにおけるエンド専門医の人気の高さです。同国ではエンド専門医になるためには、歯科医師になった後に大学院で専門知識を学ぶ必要がありますが、その専門課程の合格率がたったの1%なのです!往年の旧司法試験合格率(2~3%)の上をいく難しさです。これは、①自分の歯を残せる治療として、エンド治療の価値の高さが認められていること、②治療費が術者の技量によって自由に、かつ高額に設定されていること、等によります。ちなみに、エンド専門医は医師を抜いて、『子供のなりたい職業No1』になっているそうですよ!

日本では、歯科医師のライセンスさえあれば、ご自身の取り組み次第で専門課程に進むことなく、『エンド専門医』の看板をかけ、自費根管治療に特化することが可能です。私自身もこの恩恵に浴しており、お蔭さまで今のところ成功しております。実感として持っているのは、『なんとしてでも自分の歯を残したい、という患者は想像以上に存在する』ということです。日本の歯科医師の方々は、制度的にも需給的にも大変にお買い得かつチャンスの山を前にしていると再認識いたしました。

次に驚いたのは、学生を含めたエンド専門医の方々の優秀さです。大学院生を含め、質問の質・レベルがともに高く、わたしとディスカッションに発展していきます。翻って日本で講演させていただくと、『情報過多』というお声をよくいただきます。これは、ベースの知識が不足しているため私の講演内容が上滑りしてしまっているのだと思われます。日本の先生方が怠けているかというとけっしてそんなことはありません。日本の先生方に不足しているのは、『インプットの時間』ではないでしょうか?保険診療を続ける限り、客単価が安いため患者数を稼がなければなりません。そうなると必然的に診療時間が伸びてしまい、一日がおわるころにはへとへとになってしまうでしょう。セルフブラック企業状態になっていることをご認識ください。

また、日本の先生方を見ていて勿体ないと思うのは、実力をつけるべき『働き盛り』の時に、『雑用』に駆り出され、ご自身のインプットが二の次になってしまっているケースが散見されることです。『勉強』『情報収集』の目的で参加しはじめた勉強会などの中間管理職に取り立てられ、その活動が忙しくなってしまわれるようです。ですが、忘れないでください。どんなに大きな集団に所属しようが、最後に自分のパフォーマンス・キャリアの責任をとるのはご自身しかいません。コロナ禍を経てオンラインコンテンツが充実し、いろいろな情報を一人でも簡単に入手できるようになっています。一人になることを恐れずに、落ち着いてご自身と向かい合い、インプットに努めてみませんか?

海外のKOLは驚くほどみんな『一人』です。必要以上に重鎮や先輩の目を気にできるほど、自分のキャリア期間が長くないとわかっているからだと思います。

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寺内 吉継 profile 東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師

神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。