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臨床や経営に関する著名医師によるコラム Opinion


歯科医院経営には、幅広い知識と経験が求められます
本連載企画では、歯科領域にまつわる様々な分野でご活躍中の方々に、
多彩な経験やデータ等から導き出された見解・持論をシリーズで語っていただきます。

  • ストック型予防医療の理論と実践
  • 「原点」に返り「未来」を見据える歯科医院経営
  • 自費根管治療のススメ
  • 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞
  • ホープレスの歯に立ち向かう
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エンドペリオ病変の治療戦略が見えてくる

FEEDNOTE No.58 掲載記事

一般的にホープレスという言葉から連想されるものは先が絶望的な状態と考えられるが、歯科臨床においてホープレスとは深い歯周ポケットであったり、大きな動揺であったり、止まらない排膿だったり、歯を保存できる可能性が非常に低い状態と考えられる。

この症例は65歳の女性でブリッジの支台歯である左下犬歯の腫れを主訴に来院された。近心には根尖に到達しそうな10〜11mmの深い歯周ポケットがあり、周囲の歯肉には腫脹が見られ、根管治療は未処置であった。患者とのコンサルテーションの中からこの歯を抜歯すると前歯部がデンチャーとなり、咬合の支持が失われるためなんとか残して欲しいという強い希望から保存を試み、まずは根管治療から行ってみることにした。(図1、2)

根管治療を終え、十分な観察期間を経たが、近心側にはまだ8mmの歯周ポケットが残っていた。次のステップとして歯周組織再生療法を行った。(図3、4、5)

歯周外科を行った後すぐに左下第一小臼歯までを含めたブリッジタイプのプロビジョナルを入れ固定をし、約6ヶ月の十分な治癒期間をおいた。(図6)

その後再評価を行ったところ、歯周ポケットは全周2〜3mmとなっており、動揺度も消失していたため、最終補綴へ移行した。(図7、8)

この症例からエンドペリオは複合的な病変であるが故、適切な治療を適切な順で行っていくことや根管治療後や歯周外科後などの治癒期間をしっかり取ることが大切であると考えられる。昨今デジ タルデンティストリーの普及により何かとファーストな治療がもてはやされる一方、バイオロジーを考えたスローデンティストリーの重要性が再認識させられるのがエンドペリオの面白いところである。

木村 文彦
木村 文彦 profile 東京医科歯科大学卒。
神奈川県横須賀市にて2つの歯科医院を開院。
医療法人社団Zion 理事長。

【所属学会】
日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、日本歯内療法学会、American Academy of Periodontology